僕のキーケースは、中学生くらいの頃に父親から譲ってもらったものです。
その時点で、相当使い込まれていたと思います。革はくたくたに柔らかくなっていて、裏地もほつれていました。
それがなんだか、やけに大人びている気がするので、気に入って今でも使っています。
それはさておき、経年劣化のため、キーフックが外れやすくなっているのです。ポケットからキーケースを取り出すと、内から鍵が滑り落ちてしまうことがあります。
それで、実家の鍵を落とした時には、ふと郷愁にかられたりするのです。
最後にこの鍵を使ったのはいつだったか、と。
僕はいつでも実家に帰ることができます。鍵を持っているからです。この鍵を、キーケースを託してくれた親が死んでも、あの扉は開くのでしょう。
鍵を拾い上げる度に、いつもあの扉を思い出します。
漂流ノート#4収録予定
息を吹き込む