曇った鏡を拭う

うちは兄弟が多いので、忙しなく、互い違いに風呂場を行き来していきます。

脱衣所の扉を開けると、むわっと湯気が溢れ出るのです。それと一緒に、姉のトリートメントの匂いなんかも流れ込んできて、少し嫌な気持ちになります。

実家の脱衣所、少し広々としていて、洗面台には大きな鏡があるんです。

入浴前でも、後でも、曇りっぱなしの鏡です。

たまに鏡を見てみたりすると、拭われた跡のような輪郭が薄らと見つかります。前に使った誰かの跡でしょう。

何度も、何度も拭われているようです。

誰かが、必死に見ようとしたものがあったのか。
もしくは、何人もが習慣として鏡を覗いたのか。

僕も真似て、その輪郭を塗り替えるように、鏡を拭ってやりました。

誰に見られるとも思っていなかった、不意の僕が見えました。

またすぐに鏡は湯気に溶け込み、僕の輪郭が残ります。

鏡の記憶に、僕が残ります。

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