家なのに、家の匂いがしたら

帰ってきたら、玄関で家の匂いを嗅ぎました。

匂いを辿ろうとした時には、もう消えてしまっていて。

一瞬の感覚でしたが、違和感の残る出来事でした。

思えば、実家にいた頃はそういう記憶がないのです。

洗濯物やご飯などの異物の匂いではなく、家そのものの匂いを嗅いだことがありませんでした。

家の匂いと言ったら、それは他所の家が思い起こされるのです。

そして、今の家には匂いがあります。

暮らした時間の問題でしょうか。

はたまた、暮らしている相手に理由があるでしょうか。

同棲している彼女は未だ他人のままなのかもしれません。

家族ではないから、他所の匂いを感じ取ったのかもしれません。

少なくとも、僕の鼻はそのように判断しているのでしょう。

それとも。

もしかして、どんなに時間と愛情をかけてもこの匂いは消えないのではないですか。

それが、血の繋がっていない人と生活を共にしていく、ということなのではないですか。

だとしたら、僕の両親も同じように匂いを嗅いだ記憶があるのでしょう。

だとしたら、この違和感もなんだか嬉しく思えてくるのです。

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