PEOPLE IN プププランド|『MUSIC』

2018年、閉園(解散)したバンド、プププランド。
2026年6月13日に、一夜限りの復活としてライブが行われました。

キャッチーな名前にメロディ、そんな彼らの素敵なフォークソングの中から1曲、『MUSIC』について書かせていただきます。

この曲の歌詞は、「ヘイベイビー」から始まります。
1900年代の英語が、特にロックンロールが入ってきたような時代であれば、これはイカした口説き文句のようなものであったのかもしれません。
でも、現代の僕らが聞くと、どうでしょうか。
若干の稚拙さが混じった、古典的で安易な台詞に聞こえるかもしれません。
つまり、この言葉を歌うことは、実は難しいのです。
しかし、妙に熱のこもった「ヘイベイビー」が、見事に歌われているのです。

少し脱線しましたが、歌詞に戻ります。
「君と僕」が、「ケダモノみたいに」、「傷つけあって愛し合って踊る」のだそうです。
ケダモノというのは、はしたないことを意味しているでしょうか。

その後に注目してみると、「身体近づくほどに心は離れて」とあります。
つまり、これは人を人たらしめる人間性、心と、そこを除いた野生的な部分との関係を歌っているわけなのです。
ですから、ケダモノというのはネガティブイメージではなく、単に野生的に、ということだと思うのです。

「ヘイベイビー」という古典的で安直なセリフが響くのは、こうした野生的な態度で歌われているからなのかもしれません。

心と身体のジレンマ。
これに対して、プププランドはどう向き合っていくのでしょうか。

身体が近づくほど、心は離れるのですが、一方で心は燃えて、そのとき音楽が聴こえるのだそうです。ここではじめて、この曲における『MUSIC』の位置が見えてきます。

恋愛においての心と身体のジレンマと、音楽によって心が燃えるような衝動を並べているのです。ですから、サビではこの二つを関連付けながら歌うのです。
「ふたりは二度と戻れない」というのは、ジレンマのことだと思います。「もう会えない気がするから」とは、心が離れていった結果なのでしょう。

しかし、ここに音楽を重ねてみると、一つ明らかになることがあります。それは、心が離れていくことは終わりを意味するわけではない、ということです。
音楽を止めないでほしいと歌うわけは、「燃えつきて溶け合う」ことを望んでいるからです。
「溶け合う」ということは、ふたりのことを指しているはずです。心が離れていく中でも、この溶け合う過程を経て、新しい形へ向かっていくのではないでしょうか。

では、その構造について考えてみます。

身体が近づいていくとき、人は誰かと深く関わることになります。その過程では、野生的な欲求も自然と顔を出してきます。性欲も含めた、社会の中では隠れていた個人的な欲求です。これには見覚えがあって、以前書いた『ぼくのぶんしん』では、人は誰かと深く関わるほど、社会の中で身につけた自分を脱ぎ捨てていくのではないか、と考えました。

そう考えると、『MUSIC』においても、離れていく心とは、元々ある程度の距離感を保った社会的な役割の心なのだと考えられます。

それが、物理的な接近を機に不要になっていくのではないでしょうか。
心が離れていくというのは、そうなのかもしれません。しかし、それは言葉ほど悲しい事実ではなく、捉え方としては、そういう関係の段階を通り過ぎていく、ということなのだと思います。

そうして打ち解けて、殻を破っていくことで、かつてのその人とはもう会えなくなり、以前の関係には戻れなくなってしまうのです。
その先に何が待つか、そこまでは歌われていません。しかし、その変容の瞬間には、熱があると歌っています。
誰にでも起こり得る、恋愛の過程で生じる心の熱を、訴えていたのです。

つまり、プププランドはジレンマを単なる悩みの種として放置せず、そこで生まれる熱について、『MUSIC』を介して解釈していたのだと思います。

彼らにとっての音楽も、同じような熱の作用があるのだと思います。
対外的な殻を打ち破り、あるがままの個人的な欲求を曝け出せる。さらには、それを誰かと共有して、溶け合うことすらできる。
その結果の良し悪しをアピールするわけではありません。彼らがやっている音楽というものには、そういう試みがあって、燃えるほどの熱があるのだ、ということを歌っているのです。

彼らが音楽を止めないで、と歌うわけは、その熱を求めるからであったのです。

そして、これは恋愛や音楽に限っての話ではないのでしょう。
すれ違いのようで、寂しさを覚えてしまう、そんな場面。そのとき、どこかで熱を感じることはないでしょうか。それはもしかしたら、終わりであり、始まりなのかもしれません。

その熱を信じて、音楽を止めないという選択肢もあります。
そんなときには、自然に「ヘイベイビー」と歌うこともできるのかもしれません。

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