止まっているエスカレーターを上るのは、少し変です。
階段でもない。エスカレーターでもない。
そのどちらとも違う一歩目を、踏み出すのです。
重心はぎりぎりまで動きません。
踏み下ろすだけの一歩目には、妙に力が入っていて、足探りで着地場所を見つけようとしています。
確かにそこに、足場があるのに。
当たり前のように掴んだ足場へ、一拍置いて体重を預けます。
そして二段目、三段目と、テンポを取り戻したように上っていくのです。
見知らぬ一歩目は、階段の一歩一歩へと変わっていきます。
それでもなお、僕が踏みしめるのはエスカレーターです。
その下には足場を手繰る構造が敷かれていて、動いていなくとも機械なのです。
動くことができると知っていて、今は動かないことも知っています。
それでも、その足は順々と上り詰めていくのです。
もしもこのエスカレーターが宇宙まで続くのなら、いずれ本当に階段になるのでしょう。
やがて、また動き出すはずです。
そのとき、僕はどんな一歩目を踏み出すのでしょう。
息を吹き込む