蛹の青春

蝶の子供は芋虫です。芋虫の大人は蝶です。

つんつるてんで地べたを這う子が、立派な羽をパタパタと、空を舞っていく姿へと変わります。
この変身の狭間で、彼らは蛹という期間を経由します。外界から隔絶された殻の中で、自らの体を溶かしてしまうのです。

原型をなくすのです。

彼らはあの中にいて、何を想うのでしょうか。
勿論、所詮は虫です。虫ですから、という話は抜きにして、夢を見ているのか、はたまた空を飛び回ることをひたすらに渇望しているのかもしれません。

とにかく、なんと美しい変身でしょうか。
残念ながら僕たち人間には、この過程を経験することができません。
ただ昆虫たちと違って、僕たちには心というものがあります。実は、心の成長において人は変態を成し遂げるのではないかと、思うのです。

人は人生の最中で、一旦立ち止まることがあります。“何者か”と“僕”との距離の実感や、歯が立たない社会への予感によってです。
もうそのままでは未来へ飛び出せないという苦難に直面し、そして心を溶かすのです。
今まで積み重ねてきた記憶や経験を糧に、全く新しい姿へと変身するのです。

空を求める人は羽を、飢えた人は口吻を、愛に生きる人は綺麗な模様をその身体として手に入れます。ここで仕上がる心のかたちは、人生の根拠となるでしょう。芋虫がやがて、空へ羽ばたき、蜜を吸い、華麗に舞って魅せるように。

僕は、人それぞれの蛹の姿を知りたいのです。何に打ちひしがれて、もしくは恋焦がれて、今、目の前に立っているのか。蛹の外皮をめくることで、青春を共有したいのです。

最も気を付けなければいけないことは、その中身はドロドロに溶け切ってしまっているということです。全てを他人に漏らしてしまえば、その内側は伽藍堂になるやもしれません。
蛹の魅力には、秘匿性が含まれているのです。

停止、変身、秘匿。
これらに従って、今でも僕は風を感じます。

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